精神医療ユーザー・アンケート
「ユーザー1000人の現状・声」

調査研究報告の概要
-当事者による当事者の生活の質(QOL)向上を目指す-
精神障害者九州ネットワーク 調査研究委員会

調査研究について

1.本調査の目的
A)     当事者本位の精神医療・保健。福祉の実現

これまでほとんど顧みられることのなかった精神医療ユーザー(当事者)の生の声を調査、集約し、その切なる思い、生活ニーズを広く周知させることにより、わが国の精神医療ならびに保健・福祉サービスを当事者本位へと転換していくきっかけづくりに資する。

B)     本邦初、“当事者の当事者による当事者のための調査報告”
このたび、われわれ精神障害者九州ネットワーク調査研究委員会(註:現在、NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会を申請中)が報告するのは、精神医療ユーザーアンケート「ユーザー1000人の現状・声」の調査結果である。調査報告書は、主たる3項目にわたっての単純集計結果に加え、調査研究委員が当事者なりの考察や感想等を加味したものと記述式回答から構成されている。アンケート式調査の回答には、普段言葉では表せないような当事者の真実の声が数多く含まれているため、その結果は示唆に富み、且つ非常に信憑性が高いものであるといえよう。本調査は当事者自らが調査を設計、実施していることもあり、回答対象である当事者の積極的な協力が得られた。結果として高いアンケート回収率につながったのも、本調査が「当事者の当事者による当事者のための調査活動」と言える所以である。

2 調査研究体制

本調査研究は、下記の体制で実施した。

◆九州ネットワーク 調査研究委員会

委員(50音順) 坂口啓明・讃岐次郎・副島寛朗・徳山大英

藤井伸洋・山口弘美・山梨宗治・山梨洋子

3 調査方法

(1)  実施時期:200493日~1130
(2)  調査方法:
   ①全精連福岡大会参加者のユーザー集合調査

      ②全国の患者会・当事者会への郵送調査

(3)  調査対象:精神医療ユーザー 2,500人
(4)  回 答 数:回答者は1,010人(回収率40.4%
(5)  調査項目:属性、結婚・子育て、薬、医療機関、施設、就労、福祉サービス、手帳、権利擁護、等々

記述式も含めて、設問数は68問 

 

4 調査報告書の利用について

われわれがこの報告集を出すまでの長い道のりの間、常に意識していたのは、“当事者の手による当事者のための調査研究を”という点だった。当報告書を手にする人は、恣意的な加工等一切ない本調査の結果を是非とも実感していただきたいと思う。この調査で示唆された多くの事や基礎データが精神医療ユーザー主体の医療、保健、福祉サービスのあり方を検討し、当事者の力を活かしたセルフヘルプ活動に反映され、またわれわれの生活の質の向上をはかるきっかけとなるよう、有効に活用されんことを願う。

調査報告書の多面的な可能性

この報告書が1人でも多くの人の目にふれることで、あらためて当事者の置かれた状況への周囲の理解が高まるのではないかとも思う。重複するが、この報告書は当事者自身が当事者ために調査研究したものである。また、精神医療ユーザーに生活環境を提供している人たちが、この報告書から再度現状を知ることにより当事者が望む一般的社会生活環境を作りあげることも可能にもなる。

<今回の調査の概要について>

(詳細は本報告書をご覧下さい。)

当事者自身がこれほど広範囲にわたる当事者対象の調査を実施したことは恐らく日本には前例がなく、その意味でも画期的な調査といえる。われわれ当事者仲間が尋ねることにより、普段はものを言わない精神医療ユーザーがアンケート内の記述式回答も含め、本音で答えてくれた。精神医療ユーザーの生活の環境は周囲の関係者に左右されてしまいがちであるが、われわれが再度何を望んでいるかをもう一度見つめなおす必要があろう。

1.結婚子育て
精神病になると経済的な不安や、薬を多く飲んでいる不安から結婚に踏み切れないといったことがつきまとう。しかし、対象者の全体の約3分の1は結婚経験者であることが明らかになった。また結婚には周囲の反対がつき物といった常識があったが、むしろ反対もなく結婚していった状況も伺えた。
主な経済状態をみると結婚後に生活保護と就職に移行する人も多く見られた。当事者は生活保護という経済的安定があれば結婚生活も可能であるとの傾向もうかがえた。
子育てをしている当事者も他障害に比べれば少ないものの、意外に多かった
発病後も結婚の相手が当事者の場合は結婚生活も継続しやすいとの傾向がみられた。
結婚生活までの経過の支援に当事者会や友人の支援がウエイト多く占めていることから、身近な親族が考えている以上に親離れが進んでいる現状がうかがえる。
社会的な精神障害者に対する無知と無理解が当事者の子育てにいたるを人生の選択を狭めていることが明確になった調査とも言える。
2. 薬について
多剤処方の現状の悲惨さとインフォームド・コンセントの不徹底さは隠しきれない。薬を処方されるとき十分な説明もないまま、ほとんどの精神科医療ユーザーは服薬している。
また、薬の内容が十分に知らされていないため、副作用なのか、病状なのかもわからないまま服薬を重ねている様子もうかがえる。薬を渡されるとき個人情報が守られ、薬の内容も十分説明を受けられ、剤型も選択できる必要性があることがわかった。そしてユーザーが求めているのは必要最小限の薬であるという現状も判明した。
またユーザーは副作用が高い薬を飲むことによる生命の危機も感じている。
薬についての調査が示していることは、ユーザーが向精神薬をインフォームド・コンセントにのもとに「薬の剤型」と「薬の種類」を副作用が少ないものへと自らが選べることではないかと思われる。
3. 医療機関・施設等・就労・福祉サービス・手帳等・権利擁護他
医療機関では、主治医への要望として治療方針などについてユーザーに説明がされていないケースが目立つ。
病院内における権利侵害例は法律が変わろうと相変わらず続いている。
入院時の医療審査会の説明はほとんどなされていない。また、入院時のユーザーの権利については説明もされていないことが証明されている。
依然として不透明な隔離収容という精神科医療の実態がうかがえる。
一方、これまで考えられてもこなかったが、社会復帰施設の中でも、無視、暴行、セクハラなど権利侵害はおきていた。これには「社会復帰は就労すること」という家族の社会的体裁が深く絡んでいるようにも見える。
権利侵害は身近な家族、施設、医療、福祉サービスから多くおきていることを記述式回答は物語っている。
回答者の多くが当事者会を利用している、この結果は当事者会への社会的な価値を再度見直すときではないかと思われる。

以上

※なお、本調査報告書を発行するにあたり、調査研究会の構成員以外に協力いただいた専門家や学生、名前が出すことができない当事者たちの存在、また資金提供をしていただいた企業・団体があったことを追記し、感謝を述べたい。